発表資料

国土交通省 海洋政策懇談会資料 


 

概説

病院船は、被災者の看護・医療、被災地の感染症対策などに対応するだけでなく、緊急の避難所として被災者に居住空間を提供したり食糧を提供できる

資料3

国土交通省 海洋政策懇談会 2012年2月1日 意見表明

大震災の際の物流の確保の問題は、災害救援から復旧のための物流についても生じました。これについては内航海運会社が一定の役割を自主的に果たしたようですが、日本の内航海運会社はどこでも今や経営が先細りになり、従業員の高齢化も進み、消滅の危機にあるとさえ言われています。陸の輸送路に比して海運には多大の費用がかかりますから、これを自然の成り行きに任せれば、そうなるのは時間の問題でしょう。これは離島航路についても同様です。海洋立国を目指すのであれば、まずは危機対応において海上輸送の足となる日本国籍船舶と日本人船員をどのように維持していくかを考える必要があります。

その点で教訓になるのは、いわゆる病院船の問題です。阪神淡路の大震災の際に病院船の建造が提案されたことがありますが、やがてその話は立ち消えになってしまいました。これを維持する経費に目途が立たなかったということであるかも知れません。病院船は、被災者の看護・医療、被災地の感染症対策などに対応するだけでなく、緊急の避難所として被災者に居住空間を提供したり食糧を提供できる点で、メリットがあることは明らかです。アメリカでは軍の病院船が大規模災害の被災地沖合に派遣されて、大変に感謝されております。

もちろん戦時には自国の軍活動に組み込まれますが、平時においてはそうした国際貢献の担い手にもなっているわけです。世界中のどこかで何時も災害が起こっているとすれば、病院船が遊んでいる暇はありません。こうした病院船をたとえば海上保安庁に配属させて、医療は医師・看護師など官民の医療従事者、あるいは感染症の専門家を契約ベースで雇い、船長など現役の乗組員の他、訓練を受けた海上保安庁の職員や自衛隊の退役軍人あるいは民間船舶の乗組員経験者などを臨時に乗り込ませるということも考えられます。昔からそうですが、船舶の維持管理にはお金がかかり、またこれを運行する船員には特別の訓練が必要ですから、そうした特殊技能を持った人を有効に使わない手はありません。

またそういう社会貢献、国際貢献の場を準備することができれば、日本人の若い人にも将来への希望を与え、日常とは別のもう一つの役割意識を育て、また船を職場として選ぶ人も増え、また普段から海保と軍、さらには民間との交流の機会も増えて、組織の縦割りの弊害が取り除かれることもありうると思います。医療従事者や海洋関係者がチームを作って一つの船の上で具体的で明確な目的のために一緒に活動する、そういうシステムの構想こそが、海洋立国として日本が立ち行くために必要な戦略と言えると思います。

5.国際貢献とは、世界から感謝されながら日本の必要と利益を満たすことだろうと思います。とりわけ災害などの危機に見舞われた地域においては、財政援助より人の顔の見える可視化された援助の方がより感謝され、またそれほど規模が大きなものでなくても、記憶に残る援助となるように思います。NGO などの紛争地域や貧困地域での活動はその意味で日本の力にもなっているわけで、こうした活動と連携することも必要です。言い方は悪いのですが、人の顔の見える援助は、コスト的には安く済むということです。

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基本情報

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情報更新日2013/01/29