発表資料

視点「病院船」をめぐる20 年の論議


 

概説

 視点 「病院船」をめぐる20 年の論議 立法と調査 2012.8 No.331(参議院事務局企画調整室編集・発行)

目次

 本年3月、内閣府の「災害時多目的船に関する検討会」から報告書が提出された。報告書では、東日本大震災の教訓を踏まえ、海からの被災地への支援に関して、輸送、捜索・救助、医療、消火、被災者等支援、航路・港湾障害物排除、指揮の7つの役割が期待されるとし、「災害時多目的船」の運営制度、教育・訓練、医療スタッフの確保などの課題を挙げている。平時の活用策の具体例としては、離島・遠隔地などへの巡回支援、国内外での防災意識の啓発教育、海外における災害対応や国際貢献などが想定されるとしている。
 世界では、米国が病床1,000 床、手術室12 室、医療従事者1,200 名が活動可能な6万9千トンの病院船を2隻保有しハイチ地震災害などで活躍している。また、中国は2万3千トン、病床300 床の病院船を1隻、ロシアは1万1千トンの病院船を3隻保有している。
 災害が多発する国土環境に応じ、また、四面をかこむ海を通じ世界とむすんできた海洋国家の特色をいかし、「病院船」を保有し災害に備え、平常は離島への巡回検診・医療や青少年などの研修に活用し、併せて、救難飛行艇などと組み合わせ災害・医療支援の国際協力に役立て、わが国外交のツールをより幅広いものとするとの構想はかねてから提起されてきた。1990 年の中東湾岸危機を契機としたPKO協力法案審議では、1992 年4月の参議院国際平和協力等特別委員会で、政府提出法案の対案である「国際平和協力業務及び国際緊急援助業務の実施等に関する法律案」の提案理由説明で、「国際協力隊は、病院船などの船舶や輸送機、ヘリコプターなど必要な装備を持つこととし、適切かつ迅速に業務の遂行が行えるような能力を備える」と述べられている。さらに、1995 年の阪神・淡路大震災や武力攻撃事態対処法案の審議などに際し、「病院船」の保有構想が繰り返し論議された。
 他方、政府では中東湾岸危機を契機に、1991 年から1995 年まで関係省庁による「多目的船舶調査検討委員会」で資料収集が行われた。阪神・淡路大震災を受けて1997 年、有識者、関係省庁実務家からなる「多目的船舶基本構想調査委員会」が設置され、2001 年3月に報告書が提出された。この間、1998 年から海上保安庁の災害対応型巡視船「いず」「みうら」、海上自衛隊輸送艦「おおすみ」型3隻が逐次就役、1999 年のトルコ地震に際し、「おおすみ」が仮設住宅を輸送した。手術用寝台等の医療機能を有する海上自衛隊の艦船は、現有12 隻となっている。政府部内では、これらの就役により、「多目的船」に求められる役割は概ね代替し得るとの共通認識が形成され、その後検討は深まらなかったとされる。
 東日本大震災を受け昨年4月、「病院船建造推進、超党派議員連盟」が設立され、「病院船」の建造・保有に向けた国会論議が高まっている。「超党派の議連もある。大変有用な提案もあるので、それらを踏まえ、政治主導で進めていきたい」(藤村官房長官)との答弁を受け、災害対応を基本に外交のツール、国際協力の視点も加えた政府の取組が注目される。

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情報更新日2012/08/07

 

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