スペイン病院船
概説
ア 病院船配備に至る経緯と理由 ・ スペインでは多くの漁民が、サハラの近く、モーリタニア、カンタブリカなどの遠洋で漁船団を組んで操業している。そのため漁民の間では、毎日のように事故がある。しかし、事故のたびに患者を陸地に連れ戻していると、労働時間が減り、経済的にも大きな損失が出る。 ・ このような労働時間の損失を防止するためには、病院機能を持った船が近くにいる必要があり、病院船が造られた。 ・ 病院船が漁船団に随伴し、漁民の間で事故などにより傷病者が発生した際に、速やかに洋上で応急手当てや投薬を行い、あるいは陸上の病院に搬送することにより、漁民とその家族に安心感、安全と信頼感を与え、かつ経済的・時間的損失を少なくすることができる。 イ 病院船の任務 ・ 海上で仕事をするすべての人のために活動すること。特に漁船団に随伴し、事故などで傷病者が発生した際に、速やかに洋上で応急手当てや投薬を行い、あるいは陸上の病院に搬送することが、主な任務 ・ その役割には、緊急時以外に医療援助に使うことも含まれ、薬局もある。 ・ 治療の対象者は、スペイン人のみならず、EU、モロッコ、モーリタニア、セネガル等と協定を取り交わし、外国人も治療する。 ・ 紛争時に難民を救援するため、避難場所として利用されたり、食料、水、毛布などの補給支援を実施することもある。 ・ 故障して行動不能になり、あるいは通信が途絶した小型船舶の救援も行う。 ・ 軍務に就くことはないが、海賊対処のため海軍省と協定を結び、他国の船を救援することもある。 ウ 医師センターと運用海域 ・ セネガル、ナンビア、モーリタニア、セーシェルの4か所に医師センター所在。スペイン医師センターは、要望があればいつでも医師を派遣し支援する。 ・ 船2隻が病院船。3隻あったが1隻は廃止。2隻のうちエスペランザ・デル・マールは西のカナリア諸島に、ファン・デラ・コーサはカンタビア海域の北方海域に展開中 ・ 展開している漁船の総数119隻のうち100隻はスペイン籍。いくつかの漁船団がいる場合、最大の漁船団に随伴。1隻がカバーする漁船の数は季節により変動。2隻の船の展開海域は、衛星で見ている省庁から指示を受ける。 ・ EUの中で漁獲量が決まっているため、シーズンにより船の数が異なる。モロッコとは漁獲高により協定を結んでいる。 エ 病院船での医療活動 ・ 応急治療を実施。そのため医師2人、看護士1人、看護助手1人の総合的なチームで対応 ・ 医師には外科医はおらず、総合医のみ。小さな手術を行うだけ。 ・ 病院船の医師の役割は、2から3日かけて陸の病院に行かなくてもよいように、治療すること。自ら処置できない場合は、ヘリなどで陸上の病院に送る。
目次
国外における病院機能を有する船舶等の現状調査(スペイン)
調査訪問先:スペイン社会保障省海事局
訪問日2012年3月12日
1 調査の概要
平成24年3月12日、スペイン雇用・保険省海事社会局において、
同省所属の病院船、「エスペランザ・デ・ラ・マール」、「ファン・デ・ラ・コーサ」に関する聴き取り調査を実施したもの
2 スペイン雇用・社会保険省での調査結果
(1) 所属
ア スペイン雇用・社会保険省に所属し、軍には所属しない。
イ 日本やアメリカのような巡視船がスペインにはないため、スペインにはいわゆるジュネーブ条約でいう軍の「病院船」はない。
非軍事のシビル部門に所属
ウ 非軍事部門に所属させる理由
・ 病院船のような業務は、軍人の仕事ではなく、非軍事部門(シビル)の仕事
・ 巡視船や軍では、官僚主義のせいで対応に時間がかかる。シビルであれば、早く回答しすぐに実行できる。
(2) 建造
基本情報
情報更新日 | 2024/04/21 |
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