海洋覇権に付帯する中国救助船の近年発展動向

中国はここ4、5年、経済力だけでなく沿岸警備・海洋管理・海難救助の能力も一気に向上させている。

現在のところ、警備救難能力等で優位性を維持している海上保安庁だが、日本経済と同様に追い抜かれる日も近い。実際、近年警備能力ばかりが強化されたせいで、海上火災対応や救難曳航能力を備えた巡視船の建造は行われていない。さらには、海上保安官自身の生命(銃傷・爆傷・熱傷・傷病等)維持に関わる救難医療の重要性などプログラムの形跡すらない。尖閣諸島沖合での警備活動に日々従事する海上保安官が、もし中国海警艦船と砲を交えることにでも発展すれば彼らを救難する医療は現場に配置されていない。尖閣諸島は、沖縄県八重山諸島の北方にある諸島で、石垣市に属し、魚釣島・ 北小島・南小島・久場島(黄尾嶼)・大正島(赤尾嶼)の5つの無人島と、沖の 北岩、沖の南岩、飛瀬の3つの岩から成っている。最大の魚釣島からは、石垣島 まで170km、沖縄本島まで410kmの距離がある。海上保安庁ヘリコプターの航続距離が概ね200Kmだから、話題のMV22オスプレイ垂直離着陸輸送機の投入でもしない限り、医療設備の整った救急病院に運べない。ちなみにオスプレイの航続距離は、ペイロード(搭載重量)によって異なるが、648キロ(ペイロード4,536kg)から3593キロ(パイロットのみ搭乗、補助燃料タンク使用)まで航続距離があるとされている。

こうした後方支援医療ロジスティクスは必須のはずであるが、戦前から日本はこうした兵站を軽んじてきた結果、救難医療船は本来、海難救助機関の主力となるはずであるにもかかわらずだ。また東京オリンピック開催で浮かれる反面、首都直下型地震に対応する東京消防庁の航空ヘリ、海上救難船舶は優位な装備を保持していない。特に離島を抱える東京都には、湾外に出航可能な巡回医療機能を併せ持った、病院船仕様でアメニティー機能の高い、海上救難船舶が必要不可欠であろう。首都警備に関しても警視庁の海上船艇、航空ヘリ部隊を含めたテロ対策装備も圧倒的に不足していることが伺われる。

海難救助船、病院船は非軍事的でその能力が高くなったとしても脅威にはならない。オリピック主催国として実際、参加する多くの外国人が恐れる自然災害の脅威に対処するとともに、周辺国の海難救助能力が向上するのは歓迎すべきことだろう。しかも、そうした力は政治的に利用できるし、海洋管理の一環にもなる。

中国政府は、2020年までに「全方位カバー、全天候運用、即時対応、効果的救助」の可能な国の近代的海上救助・サルベージ部隊を基本的に作り上げるために、大規模な資金を投入している。資金は主に、救助・サルベージ装備に充てられるという。内訳は救助船への投資8億6600万元、サルベージ船と設備への投資2億7600万元、救助ヘリへの投資2億2000万元、土木・建築工事への投資4億6500万元など、これまでに、救助・サルベージ部門は救助船13隻の建造、救助ヘリ4機の導入、英国製救助艇20隻の導入、旧式船15隻の改造を完了した。導入ヘリには、世界で性能の最も進んだEC225大型救助ヘリ2機が含まれている。
中国がそうした能力を向上させる一方で、日本が低下させればどのような結果が待っているかは言うまでもない。

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北海救111(3474総トン、2005年竣工)

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東海救113(3474総トン、2009年竣工)

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東海救115(3510総トン、2010年竣工)

新しく装備されたのは曳船タイプの救助船に限らない。

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真ん中に見えるのは高速ウェーブピアサー型の東海救201(552総トン、2006年竣工)だ。そして前述の記事で英国製救助艇と呼ばれているものは「华英」(華英)と呼ばれ、3桁の数字がつけられている。


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イギリスの王立救命艇協会RNLIのものと同型で転覆してもすぐに戻る高い復元性を誇り、中国以外にも香港や台湾で使われている。また、この救命艇を基にしたものはアメリカやカナダの沿岸警備隊(及び予備隊)で運用されている。

また、当然ながら救助用ヘリも運用している。基本的にZ-9のような国産機(ライセンス生産)を運用する軍や海監、漁政と違い、救助局は外国製の機体も使っている(海事局も同様なのだが)。

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シコルスキー(米)S-76C

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ユーロコプター(欧)EC225

これは非軍事的な公用機に関しては民生向けと同様に兵器のような輸入制限がないためとも考えられる。

このようなSAR能力向上は06年から今年までの「第11次5カ年計画」として進められてきた。今回発表されたヘリ搭載型の新型救助船建造計画、及び15年までの12隻建造はそれに次ぐものだろう。

この新たに建造されるヘリ搭載型救助船とはどのようなものだろうか。既に救助局はヘリを運用していることから、それと連携できる救助船が必要となることは不思議ではない。実際、そのような救助船は既に運用されているのだ。

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南海救助局に配備されている南海救101(2007年竣工)である。

  • 全長:109メートル
  • 全幅:16.2メートル
  • 深さ:7.6メートル
  • 総トン数:4190総トン
  • 速力:22ノット
  • 航続距離:10000浬
  • 乗員:24名
  • 主機:14000kW

一見すると他の救助船と変わらないように見えるが、実は船橋構造物前にヘリコプター甲板を備えているのだ。

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このヘリ甲板は同局が保有するEC225大型ヘリにも対応している。

そして、この南海救101は中国で最高の海難救助能力を持つ船として大きく宣伝されている。中国政府は海上救助・サルベージ活動への資金投入を増やし、先進的装備を建設して、海上の緊急救援能力を大幅に高めているからだ。

交通運輸省救助サルベージ局の宋家慧局長は28日北京で開かれた交通運輸省救助サルベージ体制改革5周年座談会で、次のように説明した。第11次5 カ年計画(2006〜10年)中、中国が予定している救助・サルベージ部門の固定資産投資規模は約55億元(1元=約15円)に上る。うち国家発展改革委 は救助装備に20億元の資金を支出することにしており、同計画の当初3年間にすでに実施されたか、今後実施される固定資産投資総額は18億3700万元となる。

これらの資金は主に、救助・サルベージ装備に充てられるという。内訳は救助船への投資8億6600万元、サルベージ船と設備への投資2億7600万元、救助ヘリへの投資2億2000万元、土木・建築工事への投資4億6500万元など。

これまでに、救助・サルベージ部門は救助船13隻の建造、救助ヘリ4機の導入、英国製救助艇20隻の導入、旧式船15隻の改造を完了した。導入ヘリには、世界で性能の最も進んだEC225大型救助ヘリ2機が含まれている。

宋局長は、2020年までに「全方位カバー、全天候運用、即時対応、効果的救助」の可能な国の近代的海上救助・サルベージ部隊を基本的に作り上げると表明した。

交通運輸省救助サルベージ局は中国で唯一の国家海上専門救援部局で、海上人命救助、財産サルベージ、汚染物処理などの職務を担当する三つの救助局、三つのサルベージ局があり、一応の立体救助能力を備えている。

出典:2008年中国報道記事引用


(更新日: 2015/06/03)