出版プロジェクト

【出版予告】災害多発する日本。備えに不備はないのか?海洋国日本の認識を覚醒させるおざなりになってきた海路からのアプローチの有為性。専門家の指摘にメカラウロコ。第一線で活躍中の災害研究者および災害医療従事者等6名が、災害医療の未来を熱く語る。興味津々な出版は8月31日初版製本著者献本の予定。大型本屋等の店頭へ並ぶのは9月末ころ。

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はじめに

四方を海に囲まれた日本は、古くから「海洋国家」として、海と密接な関わりを持って発展してきた。日本は一九九六年の国連海洋法条約発行の日を国民の休日「海の日・七月二十日」に定める世界でも稀な海洋国家です。今から約一五〇〇万年前に大地殻変動が起き、アジア大陸の東端にある地塊が東に移動して日本列島の原型が形作られた。この時にできた凹地に水が溜まったものが日本海です。日本列島は、約二万年前の最終氷期の後、北アメリカ大陸やヨーロッパ大陸の北部の厚い氷が溶けたことで海面が上昇し、今から約二千年前の縄文時代には現在の海面が二メートルから三メートル高かったといわれます。東京の下町や埼玉県の一部も昔々は海だったようです。その後、海岸線は後退し今の位置になったわけです。また日本は、北は亜寒帯・北海道択捉島から、南は亜熱帯・沖縄県与那国島まで三三二八キロメートルほどの長さにわたって、大小あわせて六八五二の島からなる島国です。国土自体は決して広くありませんが、領海を含めた排他的経済水域(EEZ)は国土の一二倍・約四四七万平方キロメートルあり、世界第六位を誇る海洋国です。四季が織りなす美しき日本の一方、台風、豪雨・土砂災害、河川氾濫に大洪水、高潮災害、加えて火山噴火災害から地震・津波災害等、ありとあらゆる自然災害が発生する“災害大国”でもある。それは前述の日本列島形成に刻まれた地殻が今でも息づいているかでしょう。

一九九五年一月一七日、阪神淡路大震災の直後、我が国に病院船が必要という政治機運が高まったことがある。多くは七万トン級の米海軍の病院船「コンフォート」や「マーシー」への期待に留まり実現していない 。三一一の翌年二〇一二年、内閣府に設置された「災害時多目的船検討会議」委員として、三月にスペイン雇用・社会保険省海海事社会局を初訪問。同省所属の病院船、「エスペランザ・デ・ラ・マール」、「ファン・デ・ラ・コーサ」について尋ねるためだ。スペインにはいわゆるジュネーブ条約でいう軍所属の「病院船」はない。非軍事のシビル部門に所属している。参考にすべきは、シビル部門に所属する点だ。非軍事部門に所属させる理由、巡視船や軍では、官僚主義のため対応に時間がかかる。シビルであれば、早く回答でき、すぐに行動できるからと、古に無敵艦隊を誇った海洋国スペインの明快な回答だった。

翻って、我が海洋国に照らして見よう。道路も鉄路も寸断された非常時でも、過度に陸路に頼る発想が重きをなし、海上からのアプローチは軽視され検討の形骸すらない。国民のいのちを守るためには「介入Intervention」と「避難=Evacuation」を同次元で行う機動力の高い海上からのアプローチが必須である。さらにインフラが破壊された被災地で「司令塔機能 」が十分に果たせなかった前例に鑑みれば、指揮・司令機能がパッケージで移動可能な役割が病院船にある。スペインの事例からも、国民のいのちは軍に委ねるだけではない。災害医療には、意思決定から備える装備まで、自己完結できる船の特性を活かし、フルスペックの医療設備を充実させた非軍事の運営等で、ノアの方舟的観念論を正す必要がある。

災害は忘れた頃に本当にやってきたではないか。未曾有の大津波を伴い、福島原子力発電所を壊滅させた。福島の原発事故しかり、地下鉄サリン事件しかり、感染症等、自然災害に留まらずこれまでも多くの想定外を経験している。本書はこうした事象を危惧する専門家六氏が、各々の専門領域から熱い議論を試みた。予想される首都直下型地震、火災や水害のこと、東京は世界一危ない都市ということも、復旧と復興の違いなどもわかりやすく語り合った。新しくは、海洋国日本、災害大国日本に相応しいアプローチに、リジリエンス(創造的回復)も加えて議論してみた。

二〇二〇年は東京オリンピック開催年。四方を海に囲まれた日本に相応しい「病院船」を望む多くの読者の声によって、積極的平和外交を謳う日本の「災害医療の未来」のシンボルとして、オリンピック開催年に実現できれば望外の喜びである。スピード感ある素晴らしい議論にご登壇賜った各氏に心から感謝の意を表し、厚く御礼を申し上げる。

平成二七年四月

公益社団法人モバイル・ホスピタル・インターナショナル 理事長 砂田向壱

 

 


概要

著者
平田 直 (東京大学教授 地震予知研究所センター長)
土屋 信行 (公益財団法人 リバーフロント研究所 理事・技術参与)
蛭間 芳樹 (日本政策投資銀行 環境・CSR部)
有賀 徹 (昭和大学病院 院長)
山口 芳裕 (杏林大学医学部 教授)
砂田 向壱 (公益社団法人モバイル・ホスピタル・インターナショナル 理事長)
出版社
(株)へるす出版事業部 
編集者:代表取締役社長 佐藤 枢
東京都中野区中野2−2−3
TEL 03-3384-8177 FAX 03-3380-8627
hsato@herusu-shuppan.co.jp
価格
市価:¥1,200.

(更新日: 2015/06/01)