西日本新聞7月17日夕刊1面「災害医療拠点に病院船に期待」~3・11機に日本で導入求める声

本文;大規模災害時の医療拠点となる病院船に注目が集まっている。
専門家は首都直下地震や南海トラフ巨大地震の備えとして不可欠と訴えるが、平時の活用方法などクリアすべき課題は多い。
6月に日本へ初寄港した米海軍の病院船「マーシー」(全長272メートル)は一般にも公開され、最先端の医療設備を多くの人が目の当たりにした。導入に向けた機運は高まるか―。病院船を示す赤十字が世界最大級の白い船体に描かれていた。フロアには計千床に上るというベッドが整然と並び、12の手術室があった。
6月16日、東京港で停泊中に公開されたマーシー。一般の病院と変わらない光景に、多くの人が船内にいることを忘れているかのようだった。
 2月には最新鋭の手術支援ロボットが搭載された。「小さい傷口でも精密な手術が可能だ」。米軍の医師が慣れた手つきでアームを動かし、手術の様子を再現した。
 「陸上の病院と同じように必要な医療は何でも提供できる」と病院長のジョン・ロトラック大佐。30年以上の運用実績があり、心臓手術の一部と臓器移植を除くあらゆる手術ができるという。
 1990年代には湾岸戦争で多国籍軍をサポートし、約690人の患者を受け入れて約300件の手術を実施。2004年のインドネシア・スマトラ沖地震では10万人以上を治療し、病院の復旧にも尽力した。
 戦争や災害のない時は、インド太平洋地域などを巡回し、医療体制の整っていない国々で手術や治療に当たる。人道支援活動を指揮したデビッド・ブレッツ大佐は「平時の訓練こそ災害支援には重要だ」と強調する。
 日本で病院船の議論が本格化したのは、東日本大震災で沿岸部の病院機能がダウンしたのがきっかけ。大規模災害時に医療提供するため、政府は既存の船舶を改修して病院機能を持たせることを検討している。
 しかし、維持・運用費が年10億円以上とされる高額な医療機器を備えた船を平時にどう活用するかなど結論が出ていない点は多い。自衛隊が保有すれば「米国に追従し、外国と戦争する準備だとの批判は避けられない」(自民党の国会議員)との事情もあり、見通しは立っていない。 今回の寄港は、病院船を広く知ってもらおうと複数の国会議員が米側へ要請して実現。一般公開には約360人が集まった。
 公益社団法人モバイル・ホスピタル・インターナショナルの砂田向壱理事長は「日本で大規模災害が起きる可能性は極めて高く、もはや導入しない選択肢はない。政府は一刻も早く進めてほしい」と訴えた。
記事:共同通信横須賀支局松浦記者
H30.717西日本夕刊

その他、共同配信記事紹介
http://www.risktaisaku.com/articles/-/6679

http://www.topics.or.jp/articles/-/61487

https://www.nishinippon.co.jp/nnp/world/article/425123/

http://blog.livedoor.jp/abechan_matome/archives/53073118.html


(更新日: 2018/07/18)